【長】純白花嫁

「次はどこに行こう…」
 皇太子としてのリュイスの部屋、ぐらいしかわたしは思い付かなかった。
 しかしそれは本宮にある。この離れからそちらに行ったのは、つい先程。謁見した時のみ。
 新しい記憶で助かった。まだ消えていない記憶を手掛かりにして、目的の場所まで目指す。


 昼の光を受けた草木、花々はわたしの心とは正反対だった。
 緑の道、公園にあるようなシンボル、そのどれもが美しい。


 道を抜けた先、連絡通路のような、渡り廊下のようなものを歩き、いよいよ中に入る。
 わたしなんかが中に入っていいの、追い出されたらどうしよう……そんな気持ちが支配する。

 そして気付く。

「リュイスの部屋はどこ」

 わたしが知っているのは謁見の間ぐらい。
 人に聞こうにも、誰もいない。

 この状況をどうしたらいい?
 取りあえず、外に置いてある椅子に座り、考えることにした。

 なのに、わたしの心は無情にもそこから離れていく。
 この緑豊かな自然の中にいると、どうでもよく感じる。

(……あぁ、眠い)


 夢の中で聞こえた声。
「何を、しているの」


 だめ、入ってこない……。
 わたしの思考はそこで途切れた。