その後は今までになく、順調だった。
復習も大丈夫だったし、社交マナーはこれまでの中で一番分かりやすかった。
人間関係をよく保とうとするのはどこでも一緒なのだと。
「断る時ははじめに謝罪を言い、誠心誠意伝えれば分かってくれる。相手がひねくれ者以外は……ってことね」
「そうです。断る時ははっきりと。ウソを突き通す方が悪いですから」
シュミレーションをしながら行う今回の勉強はすぐに終わった。
実際はそう感じているだけなのだろうけど。
「それでは、お疲れ様でした」
帰ることとなり、立ち上がったのだが、重い空気を感じる。重いというよりは、どよんだ、と表現したほうが適切かもしれない。
「リュイス、終わったから帰ろう」
「……合歓は何でずっと無視していたんだ」
差し伸べた手を少し強く握りしめ、彼は言った。
「別に無視していたわけじゃないよ。ただリュイスのことはどうしていいのか分からず……」
軽く謝るが、握られた手は強くなる一方で。
「やっぱり合歓もいやいや私の相手をしていたんだろう。……おればっかり興奮したみたいでバカみたい」
次の瞬間、握られたと思った手は強く振り解かれた。
「まっ、てーー」
だけどわたしの声なんか届かないみたいにリュイスは部屋を出て、どんどん先を進んで行ってしまった。
一人残された時、ようやく自分のおろかさに気づいた。
あれほど社交マナーをやっても、実際に活用できないなら意味がない。
あとに残ったのは大きな後悔だった。