物陰からこっそりと出てきたのはあの人だった。

「はぁ、何でここにいるの、リュイス」

 わたしがそういうと向こうは、何故ばれたというような顔をしている。
 ばればれだったのだから仕方ないのに。


「殿下! ご公務はどうされたのです。このような場所にいてよろしいのですか」

 リュイスが答えるよりも前に叫んだのはアリサ。皇族相手だから、少しは抑えていると思うけど、神聖な場所に潜り込まれて怒りがきているらしい。
 スカートの裾をぎゅと握りしめ、眉間にシワを寄せているところからみるとよっぽどだろう。


「今は特にすることがない。だから合歓と一緒にいようと思ったんだ」
「だからといって……!」

 もはや暴れ出すのは時間の問題かな。そうこうしているうちに、五分過ぎている。

「アリサ、待って。リュイス、今の言葉は本当でしょうね?」
「さすがにそこまで愚かじゃないぞ」

 取り乱れそうなアリサを必死におさえ込む。それなのにこの人は、優雅に答える。
 ため息がでそう。


「ならいいでしょ。アリサ、このまま言い合いしていても、時間の無駄だよ」
「……合歓様がそうおっしゃるなら」

 本来なら殿下がいうなら、なはずなのに。
 彼女の中で、リュイスはどんな存在なのだろう。