取り敢えず、今は顔を合わさないようにしよう。人間目に入る視野の広さを少し恨みながら。
歩き終わったとき、ゆっくりと足をつき、頭を下げた。
「面を上げよ」
威厳を保った低い声に反応して顔をあげる。
……この人が皇王、やはり威厳のある壮年の男性。リュイスと姿形はそっくりだ。ただ髪は少しくすんだ色をしている。
隣には、皇妃……? 何故だろう、もの凄い目で此方をみている。
それに、皇妃はどこかみんなと違う。何か、“元のわたし”に近い。その長くまっすぐな黒髪、そして少し違う象牙色の肌、わたしが思うアジアン美女だった。
そして胸元には大きな首飾り。もしかしてあれが、秘玉飾りなの? 大きすぎる……でも、ものすごくマッチしている。
この人からあの金髪が生まれたなんて信じがたいが。
「ほう、本当に不思議な赤い瞳をしている。名は」
形式ばった質問。勿論、答えられる。
「涼城合歓と申します。名は合歓です」
「そなたは平行世界から来たというが、秘玉の主としてこの国に骨をおく覚悟はあるか」
いきなりの直球の質問に、わたしだけでなく周りもざわついた。


