深く考える暇なんて結局なかった。いろいろ考えたくても、謁見の準備により何もできないでいた。
清楚な白いワンピースを着て、髪も上で大きく綺麗にまとめている。やはり謁見なんてとんでもないことなんだ。緊張する。
フロウは先に行っているようなので、わたしはメイドさんに案内してもらう。わたし一人だと到底到着しそうにないもの。
このあと十数分ほど歩いたのちに、謁見の間に着いた。
大きな黄金の扉には、これまた大きなレリーフみたいなものが六枚。物語の挿し絵みたいである。
「合歓さまがご到着になりました。」
ゆっくりと扉が開く。大丈夫、謁見などのマナーも鬼教官のアリサにしごかれた。
隣のメイドさんがお入り下さいと頭を下げる。よし、行ってやろうじゃないの。下がり気味だった目線を正面に合わせる。そしてゆっくりと中に入った。右、左、一歩ずつ丁寧に。
長い道のりの真ん中の所にさしかかった時、わたしは少し顔が固まった。
(な、なんでリュイスもいるの)
側近や警護は想像ついていたのに、なぜかいてもおかしくない皇子の彼は予想外だった。
わたしの頭はどうかしている。


