一週間ぶりのシロラーナ。別にこれといった変化はない。今はお昼前なのか、昼食の美味しい匂いがする。香ばしさに反応して、お腹が鳴りそう。
準備をするメイドさんたちは忙しそうにしているが、わたしを見たら笑顔で会釈してくれる。
慌ただしい城の中を出て、中庭を通る。するとそこにはフロウがいた。
「あれ、フロウ。今から部屋に行こうと思ったんだけど」
見かけた彼女に声を掛ける。だけど、わたしはフロウの目線の先にある白い花に目がいった。
この中庭もよく来る。だから真新しい感じはしないはず。だけどどこか違和感を感じた。
「この花、やっと咲いたんだ」
「いえ、此花は毎日咲いてましたよ。……この時間帯にのみ」
フロウは優しく花に触る。小さな花びらの中には黄色い花粉がある。
「此花は【神の花】と呼ばれ、名前はない。いえ、付けることを許されていないのです」
「どうして、それに神の花っている名前じゃないの?」
「固有名詞ではありませんから。その呼び名の通り、これは神・シロラーナの花なんです。神が愛した花とも、心を表したとも云われています。神がこの民に心を開くわずかな時間にしか咲かない」
それはつまりこの国の人に心を開いてないってことじゃない。


