【長】純白花嫁


 夢の彼女のことは声しか分からなかった。特に気になることも言わないし、姿も見えないから。
 でも他人ごとのようには思えなかった。
 だから、思わず喋るのに没頭していたんだ。そうなんだ。


 自分に言い聞かせるように言った頃、ようやく覚醒へと近づいていった。

 あたりはすでに薄暗い。時間をみればまだ五時前の時間帯。しかしながら冬場は昼が短いので仕方無い。


「只今、合歓。今日は早く終わったからご馳走作るわよ」

 階下から聞こえた母の声。何時もなら7時前に帰って来るが、今日は2時間も早いなぁと思った。
 取りあえず、部屋を出る。この階段や下のリビングなども久しい。


「ご馳走ってなぁに」
「イタリアンフルコース。メインはきのこのフェットチーネ、勿論前菜からデザートまで作るわよ」

 そんなのだったら、レストラン行けばいいのに。でも料理が趣味の人だから仕方ないか。こんな風に週末もよく洒落たものを作る。