驚きについて行けない。

「待って、フロウ。貴女は確か1ヶ月したら帰ると言ってなかった? まだ数日しかたっていないのに」
「それに、合歓が帰るなんて……聞いていないぞ!」

 そう言えば、リュイスにはそこら辺のことは言ってなかった。
 わたしは帰るのが早いことに驚いているのに、彼は帰ると言う事実に驚いている。
 聞いた瞬間に、隣に立つリュイスは少し小さな私を、力強く抱きしめる。苦しくはない。わたしも腕を回したい。

「皇子が知らないのは別に構いませんよ。本来なら秘玉が変化するまで1ヶ月かかっていたのです、これまでは。しかし秘玉は変化した……前例もなく、わたくしも驚いています」

 いや、全くそうは見えないけど。

「あとは秘玉の力で元の場所に帰ります。期間は前にも言ったとおり、一週間です。帰ったときに時間はこの前のままだと思うので、好きに過ごしてくれてかまいませんが、あくまで猶予期間。身辺整理などきちんとして悔いのないように」

 矢継ぎ早に言われ、返す言葉もない。
 それにしても猶予期間、か。こっちで暮らすなんて考えてもいなかったのに。
 抱きしめる彼がわたしを乱す。

「帰る決意が出来たら、秘玉に念じます。そうすれば……」

 だんだんと、フロウの声が遠くに響く。
 あれ、わたし、どうしたんだろう。頭が真っ白になる。白い闇にのまれる。


 妃の課題、僅か数日にて一つ目をクリア――。