【長】純白花嫁


 昼過ぎになった頃、城に向かって帰ることになった。本当は1日かけてまわる予定だったのだが、予想以上に疲れてしまったので、部屋で休むことにしたんだ。

「ねえ、リュイス。今度は地方にも行ってみたいな。またこことは違う素晴らしさがあるんでしょ」
「あぁ確かにあるけど、その……なんだ」

 不意に詰まる言葉。

「私は王都の外にはまだ行ったことがないんだ」
 つまり、案内は出来ない。
 その一言に開いた口が塞がらなかった。

「仮にも皇太子、視察とかは行かないの?」
「そう言うのは視察団が行くことになって、普通皇族は行かないものなんだ」

 新たなカルチャーショック。この世界ではそれが普通らしい。無闇に外に出て、何か遭ったら困るからだそうだ。

 街の中。この世界、国の常識をわたしは知らない。まわりとは違う。
 ふと、ここに浮いたのはわたし独りきりという孤独感に苛まれた。
 所詮、異世界人はわたしだけ。わたしと同じ人なんていないんだ。

 泣きそうになるというよりも、心が止まってしまった。自分を守るために。