「で、どうだった? 怖かった?」

 興味津々に聞いてくる姿は、子どものよう。21の大の大人には見えない。母性にやられてしまいそうになる……。
 でもフロウの授業はそんなに怖いものだったかな?

「怖いというよりも、厳しいという感じはしたけどね。子どもなのに、オーラはそこらへんの大人より怖いし」
「当たり前だ! 私は、あやつは……化け物ではないかと考えているんだ」
「ば、化け物!? また面白そうな発想を」

 化け物のようなフロウを想像する。目は鋭く細く、そして闇でもギラギラと光り、口は不気味な半円を描き――。
 だ、ダメ!! これ以上想像したら、夢に出る!! 化け物というよりも、妖怪だよ、それは。

「なんで化け物なんて思ってるの?」
「あやつは私が子どものころから今と変わらぬ姿で身近にいたし、怖くて近づけなかった……ていうか、子どもならぬ雰囲気に泣き出したこともあったんだ。それに、聞く話によると、父の代からも何ら変わらず居続けているし」

 それは一種のホラーだよ。さりげなく、ずっと昔から傍にいた霊のような存在だったりするのかもしれない。
 しかも泣きだしたって――!! 微笑ましい姿を想像し、ふと笑いが零れた。

「合歓、笑うなッ。本気で怖かったんだから、あの頃は。それに、母上が一番嫌っている人で……」

 後半の方はか細い声で、ぼそぼそと言っていて聞こえなかったが、お母さんが……というのは分かった。