「でもそれは皇子には言わないほうがいいかもしれないわ。ショック受けて、元来のネガティブ思考で立ち直れないかもしれないから」

 リュイスってそんな人間だったの!? ネガティブって……全然そんな風には見えなかったけど。
 やっぱり、わたしって彼のことなんにも知らないんだよね。思い知らされる。

「秘玉の主な知識はこんな感じだから、まずは課題解決に向けて頑張ってくださいね。あと、何か分からないことがあれば、わたくしに聞くのが一番ですから」
「分かった、ありがとう」


 まだまだ分からないことだらけだけど、必死に解決しようとするわたしと、まだ後ろめたく思うわたしがいる。
 異邦人のわたしには、接する人も数が限られているし、無闇に歩き回ることもできない。
 ある意味、縛られた生活。それにまだわたしのことは一部にしか知らされてない、隠された存在。

 この世界には、わたし一人しか味方がいない。

 そんな風に考えてしまうのも、無理のないことだよね? 逃げたらいけない。
 でも心の弱いわたしはいつもすぐ隣にいる。今も必死に涙を我慢している。

 気が付けば、この部屋にはフロウの姿はなく、わたし一人だった。広くもない部屋なのに、一人ぼっちと追い込んでしまう。


(…な、泣いちゃだめ)

 泣いたら、わたしの負け、そんな風に思った。希望がないわけではないのだから。