「どういう意味?」
「あら分からない、本当に鈍いね」

 ませた少女のように見せるのに、彼女がいうとそうでもないように感じるのが不思議でならない。

「あなた、妊娠している。そしてあなたはその子と共に、この国を変えてくれる」
「……冗談?」
「あ、わたしが冗談を言うように見えるの」

 また頬を膨らませる。そんな姿は本当に小さな子どものよう。

「でも仕方ないかもね、まだ自覚する前の状態だから」

 もしかして、ほんとうに、本当なの?
 自分の体にもう一つの命があるというの?

 何も感じないわたしの体。答えは出ない。けれど、なぜか彼女の言うことは本当のことのように思えた。

「あ、赤ちゃん……。わたしの?」
「だから言っているでしょう。そしてそれを機にあなたは正式な妃になる。秘玉が完成するの」
「え、秘玉? それとどう関係があるの」
「あーそれはわたしよりも、“フロウ”に聞いた方がいいわ」

 上手く気持ちに表せない想い。でも決して、嫌な気持ちじゃない。むしろ、心躍るような気持ち。
 フロウ、といわれても今のわたしにはその言葉もすぐに消えていった。それくらい衝撃が強い。

「だからね。大切にして、その体も、そして――わたしたちの国も」

 刹那。少女の姿は森の光と同化するかのように、淡く光り、その姿を消していった。