しばらく何もしゃべらず、静寂の時が流れた。
 綺麗で、美しい場所なのに、どこか物淋しい。何とも言えない気持ちでいっぱいになっていた。

 そんなわたしを見て、少女は呆れた顔をしてくる。

「もう、なんでそんな顔するの、笑って笑って」
「……そう突然に言われても」

 頑なな表情を取っているであろうわたしに彼女は、花々が咲き乱れるような笑顔で話す。

「じゃあ、わたしが一つあなたに言葉をおくるよ」

 その時の少女を表す言葉をわたしは知らなかった。とても美しく、神々しく、それでいて華やかなオーラを身に纏っている。
 雰囲気に自然と腰を落とし、同じ目線になった。

「あなたはすでに立派な妃、その子どもと共に歴史に名を残す人になる」

 言葉が出なかった。しゃべれなかった。
 最初は言っている意味が分からず、混乱をしていたが、次第に現状が分からなくなってきた。

「いい子に育ちますように」

 膝立ちしていたわたしにゆっくりと、その手が触れる。腹を撫でられる。
 少女の姿をした彼女は何とも慈悲深く、聖母という言葉がぴったりのように思えた。