【長】純白花嫁

 その少女は終始表情豊かで笑ったり、頬を膨らませたりと、そばにいるだけで安心感を与えてくれた。
 その不思議な雰囲気はとても居心地がいい。

「あなたを選んでよかった」

 ゆっくりと近づき、手を握られた。
 落ち着いた表情でそう言う姿はやはり、少女のそれとはどこかかけ離れている。

 わたしたちには辿り着けない何かを持っている、そう思わざるをえなかった。

「わたしを選んだ?」
「そう、選ばれた乙女。あなたはこの国を平穏と発展に導く」

 少女はどこか森の外のまたその果てを眺める。そして、想いを馳せるかのように語る。
 小さな夢物語を。絵本の中のように幸せに満ちた世界を。

「人は、世界は、流転する。でもその礎だけは変わらずに心に根付く。そんな世界を」

 再びわたしの方を向き、その夢を強く話してくる。

「わたしはその場に行けれないけれど、この森でいつもそう願っているの」
「それはそれで、寂しいんじゃないの?」
「そうね、さびしいかも。でも想いを感じることができれば、わたしはそれだけで幸せだから」