平日の正午。この時間帯に街で高校生を見かけることはまずないと思う。
 おかげでわたしは周りから怪しい目で見られている。

 別にじろじろ見なくてもいいじゃない! 今日は登校日だったから言っただけなのに、と心の中で愚痴る。


 わたしの名前は涼城合歓(すずしろねむ)、18歳の高校三年生。 新年になったばかりの一月下旬。わたしの学校ではその頃から自由登校になる。
 わたしは既に昨年、第一志望校を推薦合格しているから行く必要もない。
 まさに高校生活の最後の長期休み。将来も決まったし、これからの生活も楽しみで仕方なかった。

 ただ、この自由登校……厄介なことに登校日というものがある。登校日は週に一回あり、朝の挨拶のためだけに学校に行く。
 近場ならいいけど、わたしは辺鄙な田舎から片道二時間かけてきている。
 これでも分かると思うけど、わたしの場合学校に居る時間より、通学の時間のほうが長い。

 おかげさまで、行きも帰りも溜息ばっか。各駅停車の電車の中からいつも見る景色にも飽きていた。
 まあ三年間ずっと見ていた景色だから。この景色とももうすぐでお別れだから、しっかり見ておこう……なんて考え、この時のわたしにはなかった。