【長】純白花嫁


 普通は入らないだろうけれど、ものすごく気になる。
 自分以外は誰もいないし、いいかという軽い気持ちで中に入った。

「何も、ない……」

 しかし、見渡しても何も見当たりはしなかった。

「でも何か、感じる」

 目では見えなくても、温かさ、嬉しさ、様々な想いに溢れている。寂しさは感じない。
 一通り中を見た時だった。

「ようやく来てくれた」
「……え?」

 声が聞こえた。反射的に振り返る。だが、そこには何もなかった。
 でも何かがある、いやいるのは雰囲気で感じ取ることができた。

「あぁ、ごめんね。“姿”がないとわからないね」

 その瞬間、何もなかった場所に靄がかかり、そして誰かの気配が生まれた。

 幼い声だった。どこか聞いたことのある声だと思っていたのに、その時まで気付かなかった。
 わたしは感じることはできたのに、知ろうとしていなかった。
 晴れたその場所から見える姿に、既視感を覚えた。

「ようやくここまで来てくれた」

 だけど、そんな笑顔は知らなかった。
 今起こっていることは本当は現実なのか、それともやはり夢なのか。今のわたしに答えは出せなかった。