「ふぎゃー!」

 何とも言えない声を発してしまう。改めて思うと恥ずかしく、目も向けられない。
 火照る頬をどうにかしてほしい。

「やっと出てきた」
「出てきたというか、出てこさせたんでしょ」

 わたしがそう言うと、何が面白いのか大声で笑い始める。
 彼の子どもっぽい姿はどこか懐かしく、温かい。
 そんなふうにすると、こちらの怒りは自然と収まってしまう。引き攣った力も緩む。

「で、納得したのか」

 何が、とは聞けなかった。

「うん、まあ」

 曖昧に返す。今回の出来事で周囲からすれば納得する出来出会っても、わたしには腑に落ちないところがあった。
 というよりも、ただの寂しさなんだろうけれど。
 真実とは時に残酷だと思う。知らなければ、今まで通り普通に接することが出来た。

 いや、もちろんこれからもそうしていくつもりだ。
 でも心のどこかで壁を作っているのかもしれない。マナちゃんは元は神寵姫であったということで。
 仲の良い友達を取られたような、友達が実はすごい人物だったと知らされたような、どちらにしてもわたし自身の気持ちに変化があったのは確かだった。