「わたし自身は全く分からないのだけど、実際に可能なことなの、フロウ」
「だからさっき無理だと、ナーディアが言っていたじゃない」

 今のわたしには関係のないことだけれども、フロウがマナちゃんのことを「ナーディア」と読んだのが少し悲しかった。
 わたしの知っている彼女ではないと言われているみたいで。

 落ち着いて考えてみると、フロウがこんなにも焦っているのも不思議な光景だった。
 いつもは取りみだすこともせず何事も解決する。いや、今も取りみだしてはいなが。
 お互いが落ち着いていないような状態、そんな感じ。

「まあまあ、取りあえずすべては合歓の思いのままに」
「どういう意味?」
「そのままよ」

 おそらくこの中で一番、冷静といえるであろうマナちゃんからの言葉。
 今のわたしにはそれが一番信じられることだと思う。

「分からないけど、覚えておくよ」

 このことに関しては何も解決しないまま、屋敷を後にすることになる。
 こんなにも行きと帰りで心境が変わるなんて、あの頃はちっとも思っていなかったけど。