【長】純白花嫁

 もちろん、貴族でも正式に手続きを取れば神職に就くことはできる。だけど、当時青年だったその男は社交界で失敗をし、その場から離れざるを得なくなった。
 だから仕方なしに神殿に入ることになった。そこでかつての柵を断ち切り、その心をすべてに神の元に捧げる。

「表向きには過去のことは捨て、神職に励んでいると思っていたけど違っていた。多分、こうなることになった相手たちに復讐をしたかったんだと思う。だから、私に目を付けて利用してきた」

 もちろん、それが本当かどうかは分からない。ただ、当時のことで彼女自身が想いとったことをありのままに語ってくれた。

「私に取り入って神殿での地位を確立し、政治に介入しようとした」

 そのために汚い手だって平気に行ってきた。善人面をして、裏ではとんでもないことを考えていたヤツだったんだろう。

「私がそれに気付き、正そうとしても意味はなかった。逆に怒った彼は私を襲ってきた。男と女では力の差が歴然、どうしようもないと思っていたわ」

 その時彼女は命の危機を感じたという。せっかく六百年の長きを経て生まれた女神と民のための命を捨てるわけにはいかない。

 そこで彼女は女神と契約を交わした。
 今ここに居ても死は免れない。彼を止めれなかった私自身にも罪はある。ならば生きることが私への罰だ。再び生をやり直し、安全な場所で2度目の人生を送り、時が来れば舞い戻る。今度こそ、正すことができると信じて。