【長】純白花嫁


 わたしの感じていたことに気付いたのか、はたまた怪しんでいるのがばれたのか、すぐに取り繕った。

「最初に気付いたのは本当にたまたまだから。普段は使っていないと聞いた物置から物音が聞こえ、好奇心で近付いたのだけど、その時は何も分からなかった。何しろ真っ暗で何も見えなかったからね。気のせいだろうと」
「真っ暗な物置? そうなのですか」

 フロウがマナちゃんに確認する。それに深くうなずいて応えていた。

「灯りなんてなかった。でもベッドやテーブルもあったから物置と言われたら違うかも」
「普段は物置として使っていたけど、マナちゃんを隠すために細工したのかもしれないわよ」

 そこらへんの真実は当の本人しか分からないが、場所は一致しているはずだ。

「話は戻って……。気にはなったけど、すぐに忘れてしまって、次に行ったときにいよいよ怪しいと踏んだんです」
「また似たようなことがあったから、でしょ?」

 マナちゃんの問いにそうそうと頷く。マナちゃん自身も憶えていることらしい。
 普段、昼間は独りきりだったので時たま物音を立て、危険信号を発していたという。それが、このような形で伝わっていたとは。

「でもすぐに彼に問い詰めることはできなかった。親にとっては親しい仲だし、私自身恩師ともいえる人だから。そこで、屋敷に訪れる回数を少しずつ増やし事情を調査した」
「それで、何か分かったのですか」
「イヤ何にも。人がいることは分かってきたけど、動機などをさりげなく聞いてみようと思ったけど、悉く交わされてしまい、強硬手段に出ることにしたんです」

 それがおそらく、屋敷の主人がいない間を見計らって訪れ、その部屋に入り救出したことに繋がるのだろう。
 結果、男の悪事が暴露された。

「だから詳しいことはよく分からないんですよ、お役に立てなくて申し訳ありません」

 残念そうな顔で応えるエアリスさん。でも何となくわかったこともある。
 男がマナちゃんを閉じ込めていたことは周囲にばらしていない。つまり重大な何かを隠しているか、ただ単に執着していたか。そして、普段の姿から怪しまれる要素はないということ。
 何はともあれ、そいつはマナちゃんの秘密を知っている。この世界に喚んだわけを。