「寝坊した!」

 ふと突然目が覚め、一気にそう思ってしまった。
 周りはとても明るく、陽はすでに高く上りきっている。今のわたしにでも、寝坊なんてものが許されるのかしら?
 そう思いながら、クローゼットにある服を取りだし、乱暴に着替える。
 普段ならば着替えもきちんとたたんでおくのだが、焦って心拍数も増加しているわたしにはそんな選択肢がない。

 大きな音を立てて、扉を開く。その場にはふさわしくない音に周囲にいたメイドたちも目を大きく見開いている。
 とりわけ驚いていたのは、危うく扉と壁に挟まれる寸前だったらしいリュイスだ。

「あ……大丈夫、デスカ?」

 ようやく頭の中まで覚醒してきたようだ。だって、今になって事の重大さに気付き、思考回路が停止してしまっている。
 自分で、今なんて言ったのかそれすらにも気付いていないくらいに。

「どうしたんだろう、そんなにあわてて」
「えっとすみません、寝坊したと思ったんです。悪気はないんです」

 彼の方は特に怒っている様子なんてなかったらしいが、この時のわたしには気付きすらしなかった。
 気が動転していて、自分の意図するものをは別の言葉が出る。
 今頭の中にあるのは、とりあえず謝り倒せということだけ。