「ねぇ、その喚びだした人……マナちゃんに何か言ってた?」
「そう言えば、最初に会ったときからおかしかった。私のことをずっと“ナーディア”って呼んでたし、やっと会えたって」
「やっと会えた? 確信しているのかしら」

 彼女の言い分から察するに、相手の男はマナちゃんをナーディアとして喚びだし、それが成功したと思っている。

 その時のことを思い出したのか、マナちゃんの手が震えている。よほど怖かったのね。

「いま思い出してもイライラする、あの男……!! 妄想癖というか、もうあそこまでいくと病気みたいなんだから」

 怖いんじゃなくて、怒りが込み上げてくるんだね。
 マナちゃん自身はわたしが想像している以上に強い人だった。

「となると、詳しいことはその男に聞いてみないと分からないけど、どんな人か知ってる?」
「知らないわ、全く」
「……この国の貴族出身で今までは神殿の中でも高位にある神祇だったみたいだけど」

 話を聞いて、そうなんだ、としか答えなかった。