「わたしはマナちゃんの話を信じるよ。何があっても味方だから」
そう言うと、表情の消えていた顔に命が芽吹いたようだった。
笑顔でありがとう、と答える姿は彼女の本来の姿だろう。とても愛らしい。
「それで、今まで何があったか教えてくれる?」
切り出したときのマナちゃんは怯えることもなく、堂々と答えてくれた。
「私がこの世界に来てから知っている場所はあの屋敷とこの神殿だけ。ここに連れてこられるまでは、そこから出たことがなかった」
「出たことがない?」
確か、どこかの屋敷に隠されていたって言っていたっけ。
出たことがないんじゃない。出られなかったんだろう。
「鎖に繋がれていた。ペットみたいに。だから、部屋の外にすら出ることなんて出来なかった」
「酷い。その当事者、見覚えある人なの?」
「あるわけないでしょ、だって知らない世界の人よ! 目がおかしかった、いかれていた。あの人」
知るわけがない。そうよね。なら、なぜそこまでして彼女を隠し続けていたのか。
わざわざ、別の世界まで呼び出しておいて。
……呼び出した? 何のために。並行世界なんて、わけの分からない世界からひっぱってくるほどの理由があるはず。
うっすらと、分からなかったことが見えてきた。


