【長】純白花嫁


 しばらく経ち、彼は何があったのか立ち上がった。

「今がちょうどいいようなので案内します」

 そう言って、また外へ案内し出した。
 今の見えない変化で何かを感じ取ったのだろうか。わたしたちには分からない何かが分かるということが、不気味であり物凄いことのように思える。

 神殿のさらに奥へと進む。渡り廊下のようなところから、シンメトリーの美しい回廊に移る。

「こちらの階段になります。ここからは似たような道がたくさんあるので、迷わないようにしてください」
「あ、はい」

 おそらく、わたしに対して言った言葉なのだろう。フロウの方はというと、慣れたように進んでいるから。
 方向音痴というわけではないが、本当に似た道ばかりで混乱してくる。どうやって覚えているのだろう。

「保護という面だけでなく、神寵姫というお方ですから。詳しくはまだ分からないことだらけですが」

 そんな話をしていたら、目的の部屋にまでたどり着いた。
 見た感じは、周りの部屋との区別がつかず、本当にこの部屋なのだろうかと疑問だが、実際に中に入ってみると、今までと違う雰囲気に驚きを隠せない。
 質素で厳かな造りとは対照的に、赤と金が印象的な豪華な内装になっており、宮の一室といっても過言ではない。