【長】純白花嫁

「うわぁ、雰囲気あるなぁ」

 そう、御伽噺に出てきそうな、森の中に佇む横長のお城みたい。
 門を潜ると、すぐに馬車は停まった。

「ここで停まるんだ」
「さすがに神殿にもなると、馬車は奥まで入れません」

 よってここからは徒歩になるわけだ。
 そんなに離れていない。この周囲の風景ーー庭のようなところは草原のようでもあり、木々や花が生い茂っているところもあり、言うなれば自然そのもの。

「すごい……あ、向こうに噴水があるの?」
「あ、そっちは」

 その場だけ人工的なのにまわりとマッチしている不思議。
 フロウの声も忘れて、向こう側まで走っていく。

 乱れることなく、一定量流れ続けるそれはどこか幻想的に思える。
 光と反射してきらきらと輝く。

――まっていたよ……

「えっ、あッ」

 時が止まった。
 頭の機能も停止する。でもそんなことって。どういう仕組みなの。
 なんでフロウの幻影がうつっているの。

 いや噴水に映ったというよりも、そね上に立っている?

 わたしが声をかけたときにはすでに消えていた。
 同時に重なるフロウの声が現実へ引き戻す。