【長】純白花嫁

「特に衰弱しているわけではないのですが、以前の失踪時の記憶があやふやのようで話が上手く出来ません」

 よってわたしの役目はと言うと、正式に妃となった今、公式に神殿を挨拶しに行き、例の彼女を励ますというもの。
 これは歴とした公務になるらしい。

「でも、そのことと夢のことがどう繋がるのかな」

 最大の疑問は残ったまま、外出の準備をすることになった。
 公務ということで、歩きやすいワンピースのようなドレスを纏う。手袋をはめると、ますますそれっぽい。

 対して、フロウはいつもと変わらない愛らしいゴシックフリフリドレス。見た目は小さくて可愛いから似合っていると言えば、似合っているだろう。
 ただし、口は閉じたままが条件。

 神殿までは馬車で移動する。森の小道を10分ほど進めば着くようで、徒歩でも十分行けるらしいが、今日はダメ。

「ってどうしょう、緊張する!」
「いつも通りにしていればいいでしょう」

 馬車は待つこともせず、さっさと進んでしまう。
 見えてきたのは、森に佇む厳かな建物だった。