やっぱり親だよね、言いたいことについて先に言うなんて。
「大丈夫だよ、料理もそれなりに出来るし」
「でも初めてのことで心配なのよ」
「少しは連絡してこいよ」
「うん」
ごめんなさい、嘘を言ってしまって。でも悲しませるようなことは言いたくないから。
心を落ち着かせ、口を開く。
「これからのことは不安もあるけど、楽しみなことも多いから。たぶん、一人になって二人のありがたみが分かると思うけど、今までありがとう。わたし頑張るから」
沈黙が続く。
とても長く感じたけどそれを破ったのは、お母さんだった。
「なに、一丁前なこと言っているのよ!」
「まるでこれから嫁にでも行くみたいだな」
二人の笑い声が可笑しかった。
半分、当てられているし。
「だってこれからは離れて過ごすからちょっとけじめを付けて、伝えたかったの」
「……そんな事を言う年になったんだな」
温かい家族の空気。わたしはそれが大好きだった。これからも忘れないようにしたいと心に留めた。
「ありがとう、わたしの世界。大好き」
幸せの涙をひとつ零し、世界とお別れをした。


