少し肌寒いのを感じ、目が覚めた。
 静かな中、時計の針の音がやけに大きく聞こえる。

「寝ていたの?」

 ここは自分の部屋。季節はまだ寒い冬……の終わり。
 別におかしいことなんてない。

「夢だったのかしら」

 長く、果てしない夢のような世界にいた。でもどちらが現実か分からない。
 ふと、鏡に目がいった。いや正確には自分の姿。

 黒い目と髪に、可愛くもない部屋着。その姿が懐かしく思えてくる。
 そんな中、ある一点に目がいった。

「あれ、これって」

 手にとって触る。小さいものから、少し大きいものもあるが、真っ白の丸い石、玉。
 見る対象を鏡から実物に戻したとき、頭の中のもやが取れていくのを感じた。

「あッ、これは……」

 秘玉。
 シロラーナの妃となるべき方に贈られる宝玉だ。

「夢じゃない、現実だ」

 完全に覚醒した頭で考える。何のために現実に戻ったのかを。
 この生活に悔いを残さないため。
 そう思った時に真っ先に思い浮かんだものがある。

「高校の卒業式」

 あと1ヵ月で卒業をすること。
 ここにきて、高校だけは卒業したいという気持ちが芽吹き始めたのだ。