【長】純白花嫁

――もうすこしで、つたえることができる。

「はっ!!」

 刹那、体が飛び起きた。突然の目覚めに、体もわたし自身の心も驚いていた。
 肩で大きく息をして、呼吸を落ち着かせる。
 窓の外を見ると、少し影が出来ていた。時間の方も進んでいる。

「あの声、前にもたしか、どこかで」

 でもどこだっけ。気になってはいたのに、なぜかすっかり忘れていた。
 記憶の片隅がごっそりと持って行かれたように。


「合歓様、中に入ってもよろしいでしょうか」
「あ、はい」

 やめよ、やめよ。考えるのやめよ。だって、怖いしどうにもならないじゃない。
 また何かあれば、誰か……フロウにでも相談してみよう。超常現象とか得意そうだし。

「あら、お休みでしたの」
「いえ、いま目が覚めたところですから」

 今の気持ちを隠すように笑みを作る。気付かれないことを願って。

「今日は肌の保湿とマッサージをさせてもらいます」

 そう言って、たくさんの道具を運んでくる。この世界の富を集めたようなそれに、目眩がおきそうだった。
 限りない幸福をわたしなんかが使ってもよいのだろうか、という疑問はいまだに捨てきれずに、マッサージを受けることになった。