いよいよ旅も終わりを迎える頃、帰路の途中に市場に立ち寄った。
「合歓様、何買われたんですか」
一歩下がった所から興味津々に聞かれた。
別にそんなワクワクするようなことじゃないけど、わたしの胸も心躍る。
「野菜や植物の種だよ。育ちにくいと言われているものは苗をくれたけどね」
そう言いながら袋の中を見せる。
家庭菜園は近所では人気だったけど、やったことがないから少し不安。
でも、今はその、始めるのにぴったりだと思ったんだ。
「まさか城で育てるんですかッ」
「そりゃああれだけ広いと育てたくなるでしょう? 土もいいし」
「いや許可がおりるか分かりませが」
不安そうに言われるも、わたしは大丈夫だと思っている。
何処からそんな思いが溢れているのか分からないけれども。
お土産を片手に王宮に帰ってきたのは、昼の時間帯を過ぎた頃である。
手厚く歓迎され、わたしの住まう離れまで付き添ってくれた。
とりあえずまずは風呂に入って着替えよう。