今回もまたやって来た。

 ――乙女の選定式が。




「では決まったのですね」
「ええ、でもまさかあのような処から選ばれるとは」

 女の高い声と、男の低い声がとある一室で響く。
 一目を気にしているようではあったが、周りには誰も居ない。

 女は窓の外を見ながら言い、男はそんな女を見ながら言っている。


「すべては、“運命の意思”による必然です」

 女は先ほどから表情を変えず、真剣な面持ちで言う。

「……そうですね、では後は頼みますよ、“導き手のお方”」

 男の方は少し笑みを浮かべながらそう言った。これから起こることに興味を浮かべながら。

 女はそんな男の様子は眼中にないらしく、既に部屋から姿を消していた。
 まるで初めからそこにはいなかったように。