「ホホッ。実に愉快。愉快。のぅ、槿?」



ここはお宿の離れ。



僅夏の住まう場所として建てられた。



「全くです。僅夏さま。姉様には少しお灸を据えられた方がよろしいかと…。」


僅夏の前で跪いているのは槿。



「ホッホッ。怖い妹よのぅ。わしに忠誠を誓っとるだけあって実の姉をかばうこともせんとは…。そうじゃのう。あんまりジィッとしとるのもつまらん。外に出ようかのぅ。」


よっこらせっと声が出そうなくらいゆっくりとした動きで立ち上がる。



「では、出掛けてくるのぅ。留守を頼むぞよ?」



僅夏はニコッと微笑み部屋を出た。


スキップしながら出掛けていった僅夏さまを見送る槿。


“バカな姉様。あんなこと言わなきゃよかったのに…。”


それは昨夜に僅夏が薩摩を呼び出したのが始まり―――――――。