「まぁ。ええやろ。うちは薩摩どす。よろしゅう。」

「はぁ。俺は八雲 風…です。」


「アハッ!風って珍しいどすな!」


「よく言われます。」



普通に会話を繰り広げていることが信じられないといった顔をして八雲は薩摩を見る。




八雲の視線に気づいた薩摩は無邪気な笑顔を見せているだけだ。



その笑顔に心和ませていると薩摩の顔が一瞬背筋に冷や汗が通るくらいに冷ややかになった。


と、思ったらすぐに笑顔に戻って、



「ここは気をつけなはれ。油断してると胆抜かれますえ。うちよりも厄介な奴らがうようよしてはるさかい。ほな。また。」


「ははっ。まさか…。」



冷や汗が溢れて止まらない。


「信じる信じないは風はんの勝手どす。」



青ざめている八雲を見てクスクス笑いながら一言を残しながら姿は柔らかく吹く風と共に消えてしまった。

「何だったんだ?」



歩き疲れたのもあるのか八雲はわけもわからないまま気を失ったように眠ってしまった。