ツンデレ★カレ

2泊3日の旅行が終わって、
学校に帰る準備をし、バスに乗り込む。

いつもなら張り切って桐生くんの隣に座りたがるあたしなのに、
美紗の隣におとなしく座った。


美紗には一瞬不審な顔をされたけれど、きっと何かある、ということは感づいたんだろう。
何も言ってこない。


桐生くんの隣には、当然のように可愛らしい女の子。
きゃぴきゃぴしながら桐生くんに話しかけて
可愛らしく笑っている。
会話が成立しているのかは分からないけれど、
楽しそうなのには変わりない。


「…美紗」

「なぁに?」




「美紗、あたし…
あたし、輝くんと付き合ってるの…」


一瞬前に座っている輝くんの頭がびくっと動いた気がした。
一瞬心が揺れた。


もしかしたら、と淡い期待がこみ上げてきた。


「桐生くん、寝てるぅ」


隣に座った可愛い子が甘い声でささやいたのが聞こえた。


あたしは、輝くんと付き合うって決めた。
あたしが言った。
なのにこんな風に簡単に揺れるなんて最低だ。

いや、
付き合おうって言った時点で最低だ。



違う…
違う違う。
逃げたんだ、輝くんに。
すきって言ってくれて、あたしを満たしてくれる輝くんに逃げた。
最低で最悪だ。
人の好意に甘えて利用する、最低だ。


「…そう」


遅れて返ってきた美紗の返事。