ツンデレ★カレ

「…っ!輝くんっ!!!!」


飛び込んだ先の体の人は輝くんで、桐生くんはあたしの大分後方であくびをしている。


「まいかちゃん、俺の胸にダイブしてくれるなんて超嬉しい!
じゃ、これから俺とデートね♪」


「みみみみみみさあああ…っ」


美紗に助けを求めようと、声を掛けたのに返事がない。

「あー、ダメだよ?
美紗ちゃんは永野とデートなの。だから、ね?」



確かに、あの耳打ちをされたときに告げられたヒミツは、
『永野は、美紗ちゃんのことが好きだから、怒られないよ』
だった。



桐生くんから、逃げたい



普段ではありえない気持ちが過ぎって、そのまま飛び込んだ胸に体を少し預けてみる。


「あれぇー?!なんか今日積極的だね、まいかちゃんっ♪
デート、してくれるの?」


キラキラ笑顔で顔を覗き込まれて、顔が赤くなるのがよく分かった。


「…いいよ」


再び桐生くんに目を向けると、どっかの学校の女の子に囲まれて無愛想な顔をしている。
あたしの方なんか見ようともしない。
あたしになんか、やっぱ興味なかったんだ―…。
…知ってた、分かってた、当たり前の、事実。
それを今突きつけられただけ。
いつかは分かる、目の当たりにするはずのこと。
だから別に、辛くなんてない。


遠いってこと、忘れてたのかな…
ただ、目をつむってただけなのかな…