魔法の指先

『……てゆーか、私スッピン』

今から化粧したところで間に合うはずもなく、上機嫌でサラはやって来た。もちろん、義人さんを隣に引き連れて。

『こんばんは、義人さん』
「こんばんは、心亜ちゃん。ごめんね、お邪魔しちゃて」
『構いませんよ。今、珈琲お出ししますね』

私は再びキッチンに戻って人数分の珈琲を淹れた。香ばしい香りが鼻を擽る。

「こ、こ、あ、♪」

と、そこへ顔だけ覗かせたサラがやって来た。何かを企んだ嫌な笑顔で。先程の嫌な予感はこれだったのか。

『何?』
「聞かないの?義人さん、連れてきた理由…」

どうせろくな理由じゃないだろう。だが、聞かないとまた駄々をこねるに違いない。本当に子供みたいな子だ。精神年齢は小学生か?と思ってしまう。決して本人には口にしないが。

『じゃあ、なんで?』
「えへへ、あのね~私の来日&移籍パーティーしようと思って」
『は?』

なんとも間抜けな答え。第一、 パーティーをするといったって準備も何もしてない。明日の撮影にも差し支える。

『駄目』
「え~!なんで?」
『準備も何にもしてないし、明日の撮影に差し支えるから。今日やらなくても社長が盛大なパーティー開いてくれるよ』
「ヤーダー!3人でお祝いしたいの!!パーティーじゃなくて3人で一緒にご飯食べたいの」

本日2度目のサラお得意の不機嫌モード。キッチンからリビングを覗くと、丁度義人さんと目が合った。私はすぐに目を反らす。

どうも私は未だに彼を直視することが出来ない。緊張して駄目なのだ。

『義人さんはOKしたの?』
「うん!でなきゃ連れて来ないよ」
『はぁ...しょうがない。その変わり、12時までだからね?』
「やったぁーー!!」

子供のように無邪気に笑って飛び上がるサラ。思わず顔が綻んでしまう。

こうして私たちはささやかなパーティーを行った。パーティーとは言い難い小さな食事会。それでもサラ喜んでいた。

「…Zzzz...」

時刻は11時。食事も済んで、後は片付けるだけとなった。主役の彼女はソファーでぐっすりと眠っている。長旅で疲れたというのもあるが、お酒を飲んで酔い潰れてしまったのだ。


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