パリ・ローマ幻想紀行

「ほら、仁さん行くわよ。何をぼさっとしているのよ」
 狭い入口から中に入った。近代的なキラキラした照明はなく、蝋燭とバラ窓から入る光のみで、薄暗い大きな空間であった。内部は身廊から内陣に真っ直ぐに延びており、これを南北に横切るように北翼廊と南翼廊がある。内陣の奥には、クストーが製作したピエタがあった。息途絶えたイエスを膝の上に載せて両手を広げ、天を仰いでいるマリアの像である。
「おお、何としたことか」
我が子の死に対して嘆き悲しむその表情には、ミケランジェロのピエタのような静寂はない。いずれにしても、創作者の景色がそうさせるのである。ミケランジェロと対話することができたが、クストーからの語りかけはなかった。