パリ・ローマ幻想紀行

伊沙子さんはその花壇をバックにしてポーズをとった。私は、南翼棟の端を少し入れ、花壇に植えられているとんがり帽子の木の前に立っている伊沙子さんを構図の中に収めて、シャッタを押した。この花壇も、ふんだんに人の手が加えられた花壇である。
 そして、中央棟の前にある水の前庭へと、ぶらぶら歩いた。水の前庭にある二つの泉の水は、楕円形に造形された石造りの池に溜められていた。その縁に沿って歩いた所に、青銅で鋳造された像があった。その像は、倒された壺に右肘をつき横たわっているたくましい男性である。その後ろ側には、鏡の回廊が金色に輝き、その金色が泉の小波に乱されて映っていた。私は、伊沙子さんが気まぐれに歩いているところをビデオカメラに収める。そして、この像の前に居る伊沙子さんをカメラに収める。
「ねぇ、見てよ宮殿の上、彫像がずらりと並んでるわ、凄いわね」
成るほど、人目につかないところにも、沢山の像が並んでいた。この泉の先端側に下りの階段があり、そこに広大な視野が開けた。ラトナの泉水と花壇、王の散歩道、アポロンの泉水、と大運河が真っ直ぐに延び、その両側に整然と区画された花壇や庭園が開けている。伊沙子さんは「凄いわね」と一言漏らした。そして、これをバックに写真を一枚撮った。そして、ぶらぶらと北翼棟の方へと歩いた。遥か遠くに森が見え、その合間に大トリアノン、小トリアノンが見える。その右手に、マリー・アントワネットの人工の村がある。時間がないので、ここから眺めることにした。