伊沙子さんは、人込みを縫って泉の傍らまで降りて行き、泉を背にしてその縁に座った。ローマの休日の映画で見た情景である。そして、財布から小銭を出して、泉の中に投げ入れた。予想していたとおりの行動である。私は、伊沙子さんの全てをビデオカメラに収めた。
「仁さんも撮ってあげるわよ」
伊沙子さんは、私からビデオカメラを引き取った。被写体である私と、カメラマンである伊沙子さんの間を、絶え間なく人が流れる。
「ほら、早くお金を投げてよ」
《ここで一言いっておきたいね。被写体に演技を求めてはいけないよ。映画俳優じゃないんだから》撮影は、人の流れが途切れた僅かな時間であった。私が登場する数少ないワンカットである。この泉の傍らに、観光客目当ての店が幾つかある。伊沙子さんはそこでアイスクリームを買ってきてくれた。アイスクリームを食べながら、泉を見ている伊沙子さんをビデオカメラに収める。旅行の雰囲気を出す、何気ないワンカットである。ローマの休日のヘップバーンを連想して思いにふけっていたためか、何時の間にか集合時間が過ぎていた。私と伊沙子さんは、皆が待っている集合場所へと急いだ。これ以来、添乗員さんはそれとなく、伊沙子さんと連れ添って歩くようになった。伊沙子さんは、上機嫌であったが、二人は、要注意人物になったようである。
その夜は、このツアーのコースであるレストランで、カンツォーネを聞きながら夕食を取った。登山電車、サンタルチア、など聞きなれた曲ばかりである。ソプラノの綺麗な歌声は、レストラン全体に広がる。伊沙子さんは、リズムに合わせて、体を動かしていた。私達のテーブルにやってきた。
「仁さんも撮ってあげるわよ」
伊沙子さんは、私からビデオカメラを引き取った。被写体である私と、カメラマンである伊沙子さんの間を、絶え間なく人が流れる。
「ほら、早くお金を投げてよ」
《ここで一言いっておきたいね。被写体に演技を求めてはいけないよ。映画俳優じゃないんだから》撮影は、人の流れが途切れた僅かな時間であった。私が登場する数少ないワンカットである。この泉の傍らに、観光客目当ての店が幾つかある。伊沙子さんはそこでアイスクリームを買ってきてくれた。アイスクリームを食べながら、泉を見ている伊沙子さんをビデオカメラに収める。旅行の雰囲気を出す、何気ないワンカットである。ローマの休日のヘップバーンを連想して思いにふけっていたためか、何時の間にか集合時間が過ぎていた。私と伊沙子さんは、皆が待っている集合場所へと急いだ。これ以来、添乗員さんはそれとなく、伊沙子さんと連れ添って歩くようになった。伊沙子さんは、上機嫌であったが、二人は、要注意人物になったようである。
その夜は、このツアーのコースであるレストランで、カンツォーネを聞きながら夕食を取った。登山電車、サンタルチア、など聞きなれた曲ばかりである。ソプラノの綺麗な歌声は、レストラン全体に広がる。伊沙子さんは、リズムに合わせて、体を動かしていた。私達のテーブルにやってきた。



