パリ・ローマ幻想紀行

凱旋門の前には少しばかりの芝生が敷かれていて、草花が植えられていた。この芝生に足を踏み入れて、コロッセオの死の空虚感から生への実質感を体感し、ほーっと一息ついた。そして、回りの土埃から、この芝生に足を踏み入れて涼しさを感じてほっとする。伊沙子さんは草花を見て、ローマにもこのような草花があるんだと、ローマに居る自分を実感する。無表情なコロッセオと、生き生きとした草花とのコントラストが、そうさせたのかも知れない。そして伊沙子さんは、木陰の出店で足を止めティーシャツを手にする。伊沙子さんは日本語でベラベラ喋り、店の男性はイタリア語で、ベラベラ喋る。相手は、もう一枚を出して、伊沙子さんの手に二枚のティーシャツを乗せた。結局一枚の値段で、二枚のティーシャツを獲得したのである。ローマの人との一時の触れ合いであった。添乗員さんは、バスの中の人数を確認し、二名の欠員を待っていた。全員の視線を浴びながら、最後にバスに乗ったのである。伊沙子さんの陽の効果か、それとも一行は既に観念しているのか、何事も無かったかのようにバスは発車する。私は多少気まずい思いであったが、伊沙子さんにはその影はない。そして、次の目的地である、トレヴィの泉へと向かった。