パリ・ローマ幻想紀行

私は日本語で会釈する。どこの国の人だったのか、聞き慣れない言葉であった。多分ロシア語だったかもしれない。もしも、会話ができたなら、自分のカメラで二~三枚撮って、送ってやりたいと思ったほど、彼女は美人であった。暫くの間、屋上の手摺に寄りかかって、パリの風景を楽しんだ。次に、何時パリにこられるか判らないという気分が、伊沙子さんの後姿に現れている。
「さぁ、降りようか」
「そうね」
伊沙子さんは手摺から離れる。そして、博物館に陳列している資料を見る。凱旋門の模型、建築前後の様子を収めたパネル、占領当時のドイツ兵の遺品等である。旅行最後の日であるという意識がそことなく感じながら、その余韻を残して階段を降りる。恵美さん夫婦は、凱旋門の根本にちょこんと座っていた。
「どうだった」と恵美さんが言う。
「とってもよかったわよ」
「私も登ればよかった」
「さぁ、行こうか」