パリ・ローマ幻想紀行

(3)旅行最終日
 次の六月二十一日は、旅行の最終日であり、一日中自由行動であった。前から、甥の店に立ち寄ることにしていた。その途中で、モンパルナス駅から六番の地下鉄に乗って、凱旋門に立ち寄った。地下鉄の車両の中で、観光客は私達だけであった。凱旋門の地上に出て、ここには信号がないことを実感した。私達は、再び地下道をくぐり、凱旋門に辿り着いた。地下道の出口に、凱旋門に登るための切符が売られていた。そしてそこに、現在エレベータが故障中ですという貼り紙がしてあった。
「どうする!」と、恵美さんが言う。
「折角来たんだから登らなきゃ」と、伊沙子さんは勢いよく応える。
「それじゃ、私達、下で待ってるから」
 伊沙子さんは、私の分と二枚の切符を買った。高さ四十九・五四メートル、幅四十四・八二メートル、奥行き二十二・二一メートルのこの凱旋門は大きかった。内部は螺旋階段になっていた。金属製の手摺があって、人がやっとすれ違えるほどの広さである。この階段を登る人は疎らであった。途中二~三人にすれ違っただけである。この階段の空間には窓はなく、今どの辺りを登っているのか見当がつかない。途中で一息入れて、トコトコと下を向いて登った。私にとっては結構長い階段である。