伊沙子さんは例の明るい笑い顔を交えて言う。やがて車は見覚えのあるコンコルド広場の車の流れに乗り、セーヌ川を渡り、モンパルナスタワーが正面に見えるモンパルナス大通りへと出た。ホテルの前で従兄弟は
「明日は一日中自由時間だから、お店に行くよ」と言う。
時間はぎりぎりであった。四人は部屋に戻り、私はジーパンから、スーツにネクタイ、伊沙子さんは、赤いスカートに着替えた。モンパルナスタワーで食事をするためである。
私達が宿泊している、ル・メリディアン・モンパルナス・パリホテルから、モンパルナスタワーまでは、歩いて五分である。このタワーは、ポンピドゥー大統領のパリ改造計画として建てられたものである。地上六十階のこの超高層ビルは、パリッ子に評判がよくない。高い建物は、パリ市の景観を損ねるからである。私達は、五十六階にある、ル・シェル・ド・パリで、本場のフランス料理を食べた。大きな円形のテーブルは、私達四人と、三組の新婚カップルで占めた。私は、相変わらすビデオカメラを手にしていた。この場のシーンを洩らしてはいけないからである。ツアー旅行のいいところであろう。互に顔見知りであり、私達のテーブルは賑やかであった。
食事も一段落して私は、この五十六階から下界を見下ろしてみた。オペラ座では太陽がギラギラしていたのに、厚い雲が垂れ込めていた。太陽の光が遮られて、パリの街がどんよりと土色に見える。車の流れや人の動きを無視して、一望に見えるパリの街を私はぼんやりと眺めた。背丈が違う高層ビルが林立している東京とは違って、煉瓦造りの箱が規則的に並んで、行く筋もの道路が形ち造られている。エフエル塔以外は、背を低くした、ほぼ同じ背丈の箱である。この沈黙の景観は、まるで火山灰によって背丈が揃えられたポンペイの遺跡のように、息吹を感じる沈黙である。私は窓越しに、このパノラマをビデオカメラに収めた。
「明日は一日中自由時間だから、お店に行くよ」と言う。
時間はぎりぎりであった。四人は部屋に戻り、私はジーパンから、スーツにネクタイ、伊沙子さんは、赤いスカートに着替えた。モンパルナスタワーで食事をするためである。
私達が宿泊している、ル・メリディアン・モンパルナス・パリホテルから、モンパルナスタワーまでは、歩いて五分である。このタワーは、ポンピドゥー大統領のパリ改造計画として建てられたものである。地上六十階のこの超高層ビルは、パリッ子に評判がよくない。高い建物は、パリ市の景観を損ねるからである。私達は、五十六階にある、ル・シェル・ド・パリで、本場のフランス料理を食べた。大きな円形のテーブルは、私達四人と、三組の新婚カップルで占めた。私は、相変わらすビデオカメラを手にしていた。この場のシーンを洩らしてはいけないからである。ツアー旅行のいいところであろう。互に顔見知りであり、私達のテーブルは賑やかであった。
食事も一段落して私は、この五十六階から下界を見下ろしてみた。オペラ座では太陽がギラギラしていたのに、厚い雲が垂れ込めていた。太陽の光が遮られて、パリの街がどんよりと土色に見える。車の流れや人の動きを無視して、一望に見えるパリの街を私はぼんやりと眺めた。背丈が違う高層ビルが林立している東京とは違って、煉瓦造りの箱が規則的に並んで、行く筋もの道路が形ち造られている。エフエル塔以外は、背を低くした、ほぼ同じ背丈の箱である。この沈黙の景観は、まるで火山灰によって背丈が揃えられたポンペイの遺跡のように、息吹を感じる沈黙である。私は窓越しに、このパノラマをビデオカメラに収めた。



