パリ・ローマ幻想紀行

「やはり、日本とは違いますよね」
「たまには、日本に帰るんでしょう」
「まぁ、何かあった時にしか帰りませんけど、それに私の妻はフランス人ですし、彼女の両親と一緒に暮らしていますから」
「パリに来て、親戚の人が居るなんて、最高だわ」
「今日は私が親しくしている安いお店に案内します」
 どこをどう走っていったのかは判らないが、日本の女性が経営している店に案内してくれた。ブランド品のカバンや靴、ネクタイやベルトなど、通常の免税店と同じような商品が陳列されていた。そこの女主人が甥と親しく話しているところを見ると、普段からの付き合いが相当に深いようである。フランスの常連客も四~五人来ていた。それに「安くしてやってよね」と言う甥の言葉に、安心感を与えてくれた。ここには添乗員さんはなく、時間の制限はない。伊沙子さんは、店内を一通り一巡し、バッグに焦点が絞られたようである。念入りに品定めを始めた。フランス人の若い店員さんは伊沙子さんに付き添って、流暢な日本語で話し掛ける。
「私は、暫くの間、東京で暮らしたことがあります」
「ああそうなんですか。道理で日本語がお上手ですわね」
その店員さんは、伊沙子さんの視線の先にあるバッグを取り出す。伊沙子さんは、甥の顔を立てることを意識していたらしい。
「そうね、これにしようかしら」
「パスポート拝見したいのですが」