パリ・ローマ幻想紀行

「テーマを想像して描くのと、自分自身を描くのとの違いですね」
「そうかも知れぬ」
「印象派とか新印象派とか象徴主義とか、世間では言っていますが、あなたはどう思いますか」
「そうじゃの、画家はイエスでその絵を見るものは皆信者かも知れぬ」
「人それぞれ、感じるままに見ればよいということですね」
「その通りじゃ」
「あなたの絵、ゴッホの絵には創作がありません。世間で言う何々派とか、何々主義というように、分けて見ることができません」
「どうじゃ、イエスは何派かのぉ」
「全てのものを含みます。個々人は皆神ですから」
「それでよいのじゃ」
「イエスには、キリスト教も、イスラム教も仏教もないのですね。信者が何々教といっているだけですね。印象派とか象徴主義というのは」
「その通りじゃよ」
「画家とか、彫刻家とか、音楽家とか、文学者とか言うのも、皆信者が言っていることですね」
「そうじゃ、その通りじゃよ」
「イエスと同じように、あなたが見ている静寂の世界を、他の人に見せたいのでしょう」
「そうじゃ、見せてやりたい」
「それであなたは、ゴッホや他の人に見せようとしたのですね」
「その通りじゃ」
「だけど、見せることはできない。あなた自身が体感していることを見せることができない。体感していない人に説くこともできない。説けば解くほど、あなたは『変人』に見える。弟子が離れていったイエスもそうであったように、そうですね」
「その通りじゃ」