パリ・ローマ幻想紀行

「この絵は、マネのオランピアです。モデルは一目で娼婦であることがわかります。ベッドの上に横たわって、観客に向かってふてぶてしい眼差しを投げています。誰かから贈られた花束を、黒人の女性がささげております。足元には、真っ黒な猫が描かれております。草上の昼食と同じように、大スキャンダルを巻き起こし、笑われました。しかしながら、この二つの絵は、絵画史上に残る傑作となりました。後世の画家達に大きなインスピレーションを与えたのです」
 人の流れは、横笛を吹く少年、エミール・ゾラの肖像の前を通り過ぎる。誰もがどこかで見た絵である。
「この絵は、マネの海辺にてです。新印象派とまではいきませんが、マネとしては珍しい風景画です。また、この時代の生活の一面を描いております。この絵ボック・ジョッキを運ぶ女給も、生活の一面を描いたものです」
「この絵は、ドガのベレリの家族です。ドガは現代生活の本質を追及するというテーマを、最も強く意識した画家です。目に見えるものを、写真技術のように、ありのままを表すという印象派からは離れた画家です。ドガを印象派の画家というには、多くの疑問が残るのです。この絵の中で立っている夫人は、椅子に座っている夫に対して、まるで赤の他人という心理的な面を現し、夫の方は家族の中で影が薄い存在に描かれており、母親に寄り添っている女の子は、母親の愛情を一身に受け、椅子にぞんざいな座り方をしている女の子は、このような家族から逃げ出したいような様子であります。一人一人の心理描写を見事に出した作品です」