パリ・ローマ幻想紀行

バスは、オルセ美術館の傍らに止まった。館内は一階、中二階、上階というように分かれている。一階の彫刻を足早に見ながら、ドラクロアとアングルトの絵の前に集まった。
「これは、ドラクロアのライオン狩りです。次にこの絵は、アングルトの泉です。このドラクロアとアングルトは十九世紀後半の画家です。この二人の画家は、丁度男と女があるように、対立したものでした。ドラクロアのライオン狩は、目に見えたありのままを描いておりません。人間の情熱や精神の内面的なものを探求した、非造形的な絵です。アングルトの泉は、女性の持つ官能的な線を一部の狂いもなく正確に忠実に描いております。造形的な絵です。この非造形的な絵と造形的な二つの絵は、絵画史上大きな影響力を与えることになります。この二人は、フランスの二大画家といわれております」
「これは、ミレーの落穂拾いです。こちらは晩鐘です。この絵を見て当時の貴族達は、農民の暮らしを初めて知ったそうです。ミレーは富農の息子でした。また熱烈なキリスト教徒でした。ミレーはこの視点から農村の現実を見つめたのです。農民や労働者をテーマにしたクールベと並んで社会派画家といわれました」
「この絵は、マネの草上の昼食です。当時の印象派の人たちから大変に非難され、論議を起こした作品です。自然の森の中に、正装した男性と不謹慎にも裸婦が描かれているからです。目に映る自然のありのままではないのです」