(ⅲ)モンマルトル
幸いなことに、雨は上がって太陽の日が差していた。
「これから、モンマルトルの丘に参ります。モンマルトルは、パリで一番高い丘です。キリスト教時代には聖地として、多くの巡礼者が集まってきました。そしてコスモポリタン的な雰囲気になり、やがてボヘミアンの町となりました。貧乏な画家や芸術家がその日暮しができる町になったのです。ルノワール、ドガ、ゴッホ達がこの町に住んでいました。今でも多くの画家がこの町に住んでおります。バスはクリシー大通りを走っております。ここはネオンが賑やかな歓楽街です。ムーラン・ルージュが有名です」
バスは、細い道を通って、テルトル広場の傍らに止まった。
「テルトル広場です。沢山似顔絵を描いている画家がおります。気を付けて下さい。途方もない金銭を請求されます。それではごゆっくりどうぞ」
私はビデオカメラを片手にバスから降りた。細い道を少し歩いた所に、町の中にある小さな公園ほどの広さが開けて、祭りでもしているかのように、大勢の観光客で賑わっていた。多くの画家達が、キャンバスに向かって絵を描いていた。その画家たちの中に、似顔絵を描いている画家もいる。細い道からその広場が開けた一番入口のところで、風景画を描いている画家がいた。頬から顎にかけて繋がる深々としたひげを蓄えていた。如何にも画家という風情である。私と伊沙子さんは、その画家の後ろにそーとたたずんだ。気配を感じたその画家は、そーっと振り向いて恥ずかしそうに、少し首をすくめて笑顔を見せた。伊沙子さんは、例の明るい笑顔でそれに答えた。そして、その画家は、再び画布に向かって、絵の具を載せた。観光客に対するお世辞笑いではない、自分の絵に目を止めてくれた嬉笑いのようでもある。静けさを感じさせる画家であった。
幸いなことに、雨は上がって太陽の日が差していた。
「これから、モンマルトルの丘に参ります。モンマルトルは、パリで一番高い丘です。キリスト教時代には聖地として、多くの巡礼者が集まってきました。そしてコスモポリタン的な雰囲気になり、やがてボヘミアンの町となりました。貧乏な画家や芸術家がその日暮しができる町になったのです。ルノワール、ドガ、ゴッホ達がこの町に住んでいました。今でも多くの画家がこの町に住んでおります。バスはクリシー大通りを走っております。ここはネオンが賑やかな歓楽街です。ムーラン・ルージュが有名です」
バスは、細い道を通って、テルトル広場の傍らに止まった。
「テルトル広場です。沢山似顔絵を描いている画家がおります。気を付けて下さい。途方もない金銭を請求されます。それではごゆっくりどうぞ」
私はビデオカメラを片手にバスから降りた。細い道を少し歩いた所に、町の中にある小さな公園ほどの広さが開けて、祭りでもしているかのように、大勢の観光客で賑わっていた。多くの画家達が、キャンバスに向かって絵を描いていた。その画家たちの中に、似顔絵を描いている画家もいる。細い道からその広場が開けた一番入口のところで、風景画を描いている画家がいた。頬から顎にかけて繋がる深々としたひげを蓄えていた。如何にも画家という風情である。私と伊沙子さんは、その画家の後ろにそーとたたずんだ。気配を感じたその画家は、そーっと振り向いて恥ずかしそうに、少し首をすくめて笑顔を見せた。伊沙子さんは、例の明るい笑顔でそれに答えた。そして、その画家は、再び画布に向かって、絵の具を載せた。観光客に対するお世辞笑いではない、自分の絵に目を止めてくれた嬉笑いのようでもある。静けさを感じさせる画家であった。



