地面に降りると、子犬は、積もっている雪を後ろ足で蹴ったり、雪に寝転んだりした。

「お前、冷たくないの?」

子犬は、とても楽しんでいる様子で、雪と子犬の毛の色が同じ白色なので、見ている私も愉快だった。

暫く見ていると、気が済んだのか、子犬は、動きを止めた。

そして、佇み、並木道の先、向こうの方を見ている。

「ん?どうした?」

真っ白な子犬は、私の声に反応したかのように、私の方へと首を向けた。

そして、再び、前方を見ると、そのまま歩き出した。

「帰っちゃうの?」

私は、ぽつりと呟いて、去る子犬の後ろ姿をぼんやりと見ていた。

子犬が歩みを止める。

すると、私の方へと顔を向け、今度は、長いこと私を見つめていた。

「ん?」

私は、何気なく、子犬の方へと歩みを進めた。

私が子犬の傍まで来ると、再び顔を前へ向けて、子犬は歩き出した。

それから、
歩みを進める途中途中で、真っ白な子犬は、何度も私の方へと振り返った。

「ちゃんとついていってるよ~」

私は、何度も振り返る子犬に、笑いかけた。

「それにしても、どこへ行くのだろう」


私が、ぽつりと呟いた時、サーッと風が吹き、僅かな雪が舞った。

私は、突然の雪風に目を瞑る。

風は、一瞬で止んだ。

「びっくりしたなぁ…」

私は、顔についた雪を払い、目を開ける。


「…あれ?…」


知らない景色が、目の前に広がっていた。


竹藪の中に、和風の門と大きな屋敷。


「どこ…ここ」

私は、わけがわからなかった。


「ワン!」

鳴き声に目をやると、真っ白な子犬は、目の前にいた。

一声鳴いた子犬は、走り出し、和風の門をくぐり、大きな屋敷の中へと入って行った。