平安恋物語



どれくらいそうしていただろうか。気づけば、満月は空高くにいた。


「そういえば、さっき泣いていたな。なぜ泣いていた?」


「実は先日、慕っていた乳母が亡くなりました。それから毎晩毎晩、夢にうなされていつ……。今晩の夢があまりにも怖くて……」


そう語りながら、大きな瞳から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。


「そうだったか……。知らなかったとはいえこんな離れた場所で一人、寂しかったろう」


さらに腕にこめる力を強くし、掬うように抱きしめる。